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苦しみを解決するには感情をみてみよう! その2 思い込みやビリーフの解体に必要なこと

2022年1月28日

前回の記事では、苦しみから解放されるには、「能力がある自分になる」「繊細でない私になる」という方向ではなく、どうして私は「能力がないとダメだ」「制裁だとダメだ」と信じているのか? どんな経緯、理由があったのか? を自身が理解していくことがカギとなる、ということから、まずは、私たちの中になぜこのような思い込みやビリーフが生まれるのか、その仕組みを見ていきました。

 

私たちの思い込みやビリーフは、体験を通して形成され、その体験の中にあるものは、思いや感情、感覚、ストーリー、イメージなどとともに客観的な判断をされることなくダイレクトに潜在意識へと埋め込まれていくものであることを、発達の観点や脳波との関係からも理解していただけたかと思います。

 

 

今回は、いよいよ、その思い込みやビリーフが自分を苦しめている場合、どうやってその思い込みやビリーフから自由になっていくのか、それをみていきたいと思います。そのために、体験の中にある思い/解釈や感情、感覚、ストーリー、イメージをどのように解体していくのかについて、【感覚―感情―思い/解釈】の関係を紐解きながら解説していきたいと思います。

 

ビリーフを構成する【感覚―感情―思い/解釈】

ビリーフは、経験した事実に対しての、感覚、感情、思い/解釈が合わさってできています。

前回の両親が不仲の家庭の例で考えてみましょう。例えば、自分の目の前で、お父さんがお母さんに対して「〇〇と言っている」。それに対してお母さんが「△△だと言った」、という状況に対して、子供は、ビクビクし(感覚)恐怖感(感情)を感じながら、「お父さんとお母さんが喧嘩している」(思い/解釈)ととらえながら見ます。

 

これらの感覚―感情―思い/解釈の発動は瞬時に、そして同時に起きています。このビクビク(感覚)―恐怖感(感情)―両親が喧嘩をしている(思い/解釈)から、例えば、「世界は安全ではない」といった思い込みや、「自分は守ってもらえない存在」といった自分への解釈/セルフイメージを持つに至っていくのです。

 

ちなみに、物事をとらえる際に、私たちは、体感型、感情型、思考型といった風に優位に働くチャンネルの違いがあり、どれが優位に働くかのタイプの違いによって、思考よりも感覚を先に感じるとか、思考で捉えるのが先など、感じ方の順番の違いが生じます。とはいえ、基本的に事実や状況に対して、感覚―感情―思い/解釈が同時に起こり、捉えている、というのは共通です。

 

 

このように、ビリーフの形成には、経験した事実に対して、その状況に対するセットで起こる【感覚―感情―思い/解釈】が関係している、ということです。

 

【感覚―感情―思い/解釈】の関係

思い/解釈を強める感情、感覚

次にこのセットの中の【感覚―感情―思い/解釈】の関係について、考察をしてみたいと思います。

 

私たちが感動したり、楽しさや充足感を感じたりしている(た)時、あるいは、ショックを受けたり、傷ついたりしている(た)時、これらには必ずそれ相応の感情や感覚の量が伴っていないでしょうか? ポジティブ、ネガティブ関わらず、心が動いた、心に残っている(った)というものは、その時に感じた(ている)感情や感覚が共にあるはずです。

 

私たちが、状況をとらえるときに起きる、【感覚―感情―思い/解釈】のセットですが、このセットの中の感情や感覚が大きいと、思い/解釈は、比例して真実味が強まります。

例えば、何かの演奏を聴いてものすごく胸が熱くなったり、鳥肌が立ったりして感動すると、「この演奏は素晴らしい」という思いになるでしょうし、両親の会話から怖さや恐れを感じると、「両親が喧嘩をしている」という思いを持つでしょう。逆に、高揚感をあまり感じていないときに「この演奏は素晴らしい!」とはならないでしょう。

また、いくら頭で「そんなことはないだろう」と納得しようとしても、どうしてもある考えから抜け出せない、という経験が誰しもあるかと思います。これも、感情や感覚が大きいために、思い/解釈を変えることが難しいことの例です。逆に言うと、この感情や感覚の量が減ったり、解消したりできれば、無理なく、自然に、この思い/解釈が変わるということです。(これを「認知のシフト」と呼びます。)

 

ちなみに、「量」という表現を使っていますが、怖さと悲しさなど様々な「種類」の感情や感覚が伴うことも含みます。様々な感情や感覚があることきも、思い/解釈の真実味は強まります。

 

つまり、私たちが状況をとらえる時には、【感覚―感情―思い/解釈】がセットで動き、その中で感情や感覚の量や種類が多いと思い/解釈の真実味が強まり、ひいては、そこから持つことになる思い込みやビリーフをあたかも真実かのようにさらに信じていく、という流れ、つながりになっている、ということです。

 

思いと感情と感覚は、栄養を与え合う

【感覚―感情―思い/解釈】の関係について、世界的に有名な精神的リーダーであるエクハルト・トールは、その著書『ニュー・アース』の中で、思いと感情と感覚との連動作用の観点からも述べています。

 

「思考と不可分なものとして、もう一つのエゴの次元がある。感情だ。・・・・(中略)・・・身体は頭の中の声が語る物語を信じて反応する。この反応が感情である。そして今度は感情が、感情を生み出した思考にエネルギーを供給する。これが観察も検討もされない思考と感情の悪循環で、感情的な思考と感情的な物語づくりにつながる」(『ニュー・アース』サンマーク出版、p.147)

 

 

例えば、ある人に「これ知ってる?」と言われたとき、「あの人は私をバカにしている!」という頭の中の声を信じている(思考)と、怒りや辱めを受けたような反応(感情や感覚)が起き、これらの反応がさらに自分の頭の中の声を信じ込ませて、「ほら、やっぱり私をバカにしている!」とさらに自分のストーリーにはまっていってしまう、という状態のことです。

 

このように、感覚、感情、思い/解釈は、お互いに連動して、栄養を与え合う、という性質があるのです。これが、ポジティブな場合はよいのですが、ネガティブな連動の場合は、相当苦しくなってしまいます。ですから、思考と感情、感覚の連動作用を緩やかなものにして、悪循環にならないようにしていくことが、苦しみから抜けるカギの一つである、ということもわかるかと思います。

 

 

このように、感情や感覚の量や種類が多いと思い/解釈の真実味を強めること、感覚―感情―思い/解釈はお互いに連動して栄養を与え合う、ということからも、苦しいビリーフ(解釈)を形成する【感覚―感情―思い/解釈】のセットの解体には、感情、感覚にアプローチしていくことが大切だ、ということが見えてくるかと思います。

 

感覚や感情を解放するには体に働きかける

それでは実際に、感覚、感情にはどのようにアプローチをしていけばよいのでしょうか?

 

私の行っているセラピーでは、【感覚―感情―思い/解釈】が発動している「体」そのものに働きかけることを行います。なぜなら、何かの体験をするとき、私たちは体(頭も含む)を通してそれを体験しているからです。例えば、両親の言い合いの状況についての、ビクビク(感覚)―恐怖感(感情)―両親が喧嘩している(思い/解釈)のセットは、体がなければ何を感じ、思っているかがわからないはずです。

 

体が感覚を感じる媒体であることは、わかると思いますが、体と感情とも、密接な関係にあります。

このことは、私たちの感情と姿勢の関係を考えてみるとわかりやすいと思います。

例えば、嬉しい時は、自然と笑みが出て飛び回りたくなったり、小躍りしたくなったりし、 一方で、悲しい時は、肩が落ちたり、うつむきかげんになったりするといった具合です。逆に、下を向いて背を丸めて嬉しさを味わえといっても、なかなか難しいですし、小躍りしながら悲しさを感じろといっても、これも難しいと思います。

また、例えば、災害のトラウマなどがある場合、頭ではもう終わったことだ、時間がたったのだから、と思っていても、本当の意味で解決していないのは、「それはもう終わったこと」「自分はもう大丈夫」といった新しい思い/解釈を持つための体の感覚や感情が伴っていないからだと考えられます。

 

 

このように、苦しみを生み出している思い込みやビリーフがあればあるほど、感覚や感情を解放するために、体に働きかける必要がある、ということが、このことからもわかるかと思います。

 

そのために、私の場合は、体の所定の経絡(つぼ)をトントンと刺激しながら、感覚や感情を解放し、【感覚―感情―思い/解釈】のセットの解体ができるEFT(Emotional Freedom Technique:感情解放のテクニック)というセラピーを使用したり、EFTの発展型のマトリックスリインプリンティングという療法も使用しています。

 

現在、多くの心理療法が開発され、利用することができる環境になってきていると思います。

 

その中で、私たちが苦しくなるときに、

 

・苦しみをもたらす思い込みやビリーフは体の奥深くにある
 
・思い込みやビリーフは、【感覚―感情―思い/解釈】のセットによって成り立っている
 
・感情、感覚の量や種類の多さが、思いを強めたり、連動してストーリーへと発展させていく

 

という仕組みがある、ということをベースに、体に働きかけながら、思い込みやビリーフを形成している【感覚―感情―思い/解釈】のセットにアクセスでき、感情や感覚を解放、変容できる療法を選んでいくとよいでしょう。

 

解体のプロセスは自分への愛

今回は、その1,その2と二部に分けて、苦しみとなる思い込みやビリーフをどのように解体していくのかについて解説してきました。

 

解体のプロセスは、気づいていなかった感覚、感情、思い/解釈に気づいていく、理解していくという、自分へと向けられる愛がベースになっているとも思います。

私たちは、苦しい時ほど、「能力のある私になる」や「繊細でない私になる」といった外に求める方向、言い換えるとさらに自分を痛めつける方向に行きがちですが、上記の自分の内側を見るという自分へ愛を向けることをベースにして、自分がなぜ信じてしまっているのか、どんな経験があったからなのか、それらの中身(【感覚―感情―思い/解釈】のセット)は何なのかを、自分がまず自分の理解者になる方向で、自分に向き合っていってあげたいですね。

 

ビリーフから生まれる悩みと実際のセッションではどう扱うのか?
 

ちなみに、思い込みやビリーフ、例えば「私は能力がない」、「私は醜い」、「私は嫌われ者」、「私は繊細」などというのは、潜在意識の深いところにあるので、普段は気づいていません。そして、悩みとして表れる時には、「嫉妬してしまう」、「比較が走ってつらい」、「みんなが私を受け入れてくれない(他者ばかりが受け入れられているように思える)」、「いつも自分でいられなくなる」などといったようなものになります。

 

ですから、悩みから解放されるためには、悩みを生み出すコアな思い込みやビリーフを見つけていく必要があります。そのためには、潜在意識にアクセスするために、前回の記事でも書いた心の階層を下りることを可能にする「気づきの問いかけ」を使ったり、体に働きかける心理療法(セラピー)が必要となるのです。

 

 


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苦しみを解決するには感情をみてみよう! その1 思い込みやビリーフはどう作られるのか

2022年1月12日

前回の記事では、自分の中に自己否定があると苦しむメカニズムについて見てきました。今回は、さらに一歩進めて、そのメカニズムで大きな役割を果たす「思い込み」や「ビリーフ」について、見ていきます。

 

自己否定で苦しむメカニズム

前回の記事では自己否定は、自分がよしとしない思いや感情を自分が持っていること自体を受け止めたくないために起きるということをお話ししました。

 

自分にとって持っていたいか、いたくないか(否定するかしないか)は、これも、以前の記事で書きましたが、私たちの中に根源的に死への怖れがあるため、どれぐらい死への怖れが刺激されるか、によって決まるのでした。例えば、「私は能力がない」、「私は醜い」、「私は嫌われ者」、「私は繊細」などという思い込みやビリーフがあったとして、これらが生き残りの可能性を低めると解釈されると、持っていたくないものになる、否定したいものになる、というわけです。

 

ある人は、「私は繊細だ」という思いがあっても、あまりネガティブにとらえていないのに、ある人にとっては、とても否定的に響いてしまう、という違いがあるのは上記の怖れが刺激される度合いの違いなのです。

 

「私は〇〇だ」という思いが人によってとらえ方、響き方が違うということは、これは、絶対的なものではなく、「能力がない」「繊細だ」といっても何をもって「能力がない」「繊細」というのかも人によって違うでしょうから、私たちは、それぐらい、相対的で、非常にあやふやなものを信じていると言ってもよいかと思います。

 

ですから、苦しみから解放されるには、「能力がある自分になる」「繊細でない私になる」という方向ではなく、こんなに相対的であやふやな思い込みであるにもかかわらず、どうして私はそれを信じているのか? どんな経緯、理由があったのか? を自身が理解していくことがカギとなります。

 

そこで、今回は、まずは、私たちの中になぜこのような思い込みやビリーフが生まれるのか、その仕組みを見ていきたいと思います。

そして、その仕組みがわかれば、どのように思い込みやビリーフを解放していけばよいのかについても理解ができます。一緒に見ていきましょう。

 

体験を通して作られる思い込み、ビリーフ

私たちは、自身が経験したこと、見たこと、聞いたことなどを通して、思い込みやビリーフを形成していきます。
子供から、大人へと成長していく過程の中で、私たちを取り巻く家庭や学校の環境での体験、友人・交友関係での経験、社会にある常識や価値観などが、私たちの思い込みやビリーフの形成に影響を及ぼします。

 

子供時代というのは、家庭や幼稚園、保育所、学校での生活というのが、子供の世界の大半を占めている時期であり、様々な情報や価値観、世界観に触れられる機会が少ない時期です。そのために、起きた事柄への判断が客観的にできにくく、誤った解釈、認識などもストレートに信じこんでしまう時期とも言えます。

 

例えば、両親の間でのケンカが絶えないなど、家庭の雰囲気がピリピリした中で育った場合、安心安全の感覚が養われないままとなり、「社会は安全ではない」といった思い込みや、親が不仲なのは自分のせいだと思いこみ、その結果、「私は愛されない存在、いらない子」といったビリーフ(セルフイメージ)を持ちやすいことになる、ということです。もし、虐待やニグレクトがあった場合など、ビリーフ形成にどれだけの影響があるかは想像に難くないでしょう。

 

それに加えて、特に発達の段階では脳波も大きく関与していると言われています。
私たちの脳波ですが、4つの状態に分けられ、通常の状態は、ベータ波。リラックスしている時は、アルファ波が出ています。瞑想状態や浅い眠りの時はシータ波で、深い眠りの時の脳波はデルタ波です。

 

私たちが生まれてから6,7歳までの脳波は、
生まれてから2歳までは、主にデルタ波と言われ、2歳から6,7歳にかけてはシータ波が増えてくる時期と言われています。
つまり、6,7歳までの期間、デルタ波とシータ波が占める子供の脳は、催眠状態のようにあらゆる情報を吸収し、刷り込みや主観的にとらえた信念や考えを潜在意識にダイレクトに蓄積していくのです。

 

このように、6,7歳までの時期と思い込みやビリーフ形成には、深い関係があることが理解できるかと思います。

 

思い込みやビリーフを形成する体験の中にあるもの

思い込みやビリーフは各自の体験をもとに形成されるということを考えると、「私は愛されない存在だ」という一見同じビリーフを持っている2人の人がいたとしても、そのビリーフとともにある思いや感情や感覚、ストーリー、イメージなどはそれぞれ違うものである、と言えるでしょう。

 

前述の「私は繊細」というビリーフのとらえ方が、ある人はあまりネガティブにとらえていないのに、ある人には否定的に響いてしまうと書きましたが、それは、このように、このビリーフを形成した体験の中にあるものが違うためなのです。そして、体験の中の思いや感情、感覚、ストーリー、イメージが、死への可能性に近ければ近いと解釈されるほど、思い込みやビリーフは、苦しいもの、否定したくなるもの、持っていたくないものになってしまう、ということです。

 

このような仕組みがあることを踏まえると、私たちに苦しみをもたらすと思える思い込みやビリーフから自由になるカギは、思い込みやビリーフを形成した体験の中にある思いや感情、感覚、ストーリー、イメージを解体していくことなんだな、ということも理解できるのではないかと思います。

 

ちなみに、この記事内で挙げている「私は能力がない」、「私は繊細」、「社会は安全ではない」「私は愛されない存在だ」などの思い込み、ビリーフ(セルフイメージ)は、潜在意識の中にあるため、普段は全く気づいていません。
これらの思い込みやビリーフを見つけるために、心の階層を下りていきながら、これらを探ることができる問いかけ(「気づきの問いかけ」と言います)を使用しています。

 

次の記事では、どのように体験の中にある思いや感情、感覚、ストーリー、イメージを解体していくのかについて、思いー感情―感覚の関係を紐解きながら解説していきたいと思います!

 


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