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2026年1月24日

ブログ 不安なときの対処方法 心のしくみを理解し安心をとりもどす

心地よい人間関係に必要な「境界線」② 境界線を越える理由

2026年1月24日

前回に続き「境界線」についてです。(NLだより578号

第2回目は、境界線を越えたり、越えられたりすることを許してしまう理由を、心のしくみから解説していきます。

全な境界線と心の状態との関係

前回見てきたように、自分も相手も、自分の領域で起きることに責任を持つことができていると自然と健全な境界線を引くことができます。

では、自分の領域に責任を持つという感覚や認識は、どのような土台の上に築かれるのでしょうか? つまり、どのような心の状態だとそのような感覚や認識を持つことができるのでしょうか?

それは、「自分には力がある」という感覚や心の状態なのです。この感覚や状態は、他者に依存することなく、自分の足で人生を歩んでいけるという、自分への信頼に満ちた心の在り方とも言えるでしょう。

この心の状態にあると、自分の内側で起きることに対して責任を持てると感じられ、誰がそれをコントロールできるのかを捉えることができます。また、自分と相手とは対等である(加害者、被害者という二項対立が出現しない)ということをベースに、互いに尊重することもできます。つまり、この「自分には力がある」という感覚や心の状態によって、自ずと健全な境界線が引けるのです。

このように、境界線は心の状態(つまり、「自分には力がある」という感覚をどれくらい感じているか)が先にあり、その上で、「これは誰の問題? 誰がすること? 誰ができること?」と考えていくことによって引けるものであり、それが心地よい関係性をもたらしてくれるのです。

 

「自分には力がない」という心のあり方が境界線を越える心のしくみ

それでは、「自分には力がない」という感覚や心の状態が、なぜ、境界線越えを起こすのでしょうか? その時、私たちの心はどのような動きをしているのでしょうか?

 

私たちの心には、自分の中の思いや感情を通して相手や状況を見るというしくみ(「投影」と言います)があります。自分の中の思いや感情を、「色付きのレンズ」と考えるとわかりやすいかもしれません。例えば、自分の中に「自分には力がない」という思い(レンズ)があると、それを通して見る世界には実際とは違う色がつき、相手は、自分と同じように「力がない人」に見えたり、逆に「自分より力がある人」と見えたりするのです。

 

「力がない人」と見えた場合の境界線越えの例

他者が自分と同じように「力がない人」と見えた場合、相手は「手を貸さないといけない人」と映ります。ですから、たとえ自分が疲れていても手を差し伸べなければと思うのです。例えば、ボランティア活動などで、相手を「力のない人たち」と見た場合、自分の疲れや限界を無視して関わり、やがては深い疲弊につながってしまうなども、この例にあてはまります。このような関わり方では、手を差し伸べる側は「本当は疲れている」という自分の本心を我慢することになり、相手は「そこまで困っていないのに、過度に関わられている」と感じてしまいます。その結果、双方の中に不満や怒りが溜まり、関係性は重たく、不安定なものになってしまうのです。

 

「力がある人」と見えた場合の境界線越えの例

逆に、他者が「力がある人」と見える時、相手は「自分を満たしてくれる存在」として映ります。なぜなら、自分の中にある「自分には力がない」という思いや、そこに伴う無力感や不全感を、「相手が埋めてくれる」と錯覚してしまうからです。その結果、相手に従属したり、依存したい気持ちが生まれ、本来の自分の力や自由を放棄して、相手に自分の幸せや安定を預けてしまうのです。

 

共依存のしくみ

お互いが「自分には力がない」という感覚を根底に抱えて(深い自己否定の状態です)、相手を「力がない人」と見る(境界線を越える)人と「力がある人」と見る(境界線越えを許す)人がいます。その両者が組み合わさった時に起きるのが「共依存」です。

例えば、モラハラやDV、虐待、カルト的な宗教による支配、子どもへの過保護や過干渉といった状態から抜け出せずにいるケースの多くがこれにあたるかもしれません。傍から見れば、「そんな関係性から早く離れたらいいのに」と思えても、当事者にはそれが難しいのです。それはなぜなのでしょう?

越える側の目には、これまで見てきたように、相手は「力がない人」として映ります。そしてそれは、深い自己否定があるために、最も否定している自分の像を目の当たりにするかのように感じられて、強い不快感や怖れが生まれます。そして、その痛みから自分を守ろうと「それは相手のせいだ」と問題をすり替え、攻撃的な態度に出るのです。その際に、暴力や支配的言動(自分の元を去ったら悪いことが起きると脅すなど)を用いることも少なくありません。

一方、越えられる側もまた、「自分には力がない」という感覚と深い自己否定がベースにあるため、相手が「力を持つ人」として映ります。そのため、支配されることを当然のように思っていたり、自分の本心や判断に自信がもてず、簡単に自分の領域を明け渡してしまうのです。

このように、お互いが「自分には力がない」という思いを深く信じているので、その欠け感をお互いに埋め合えれば、それに向き合わずにすむというメリットとなるため、この関係を断つことが難しくなるのです。

 

まとめ

今回は、「自分には力がない」という心の状態がなぜ境界線越えを生むのかについて見てきました。では、なぜ「自分には力がない」という感覚や状態になってしまうのでしょうか? 次回はその理由の解説とともに、「自分には力がある」という感覚の回復の仕方について書いていきます。

 

 

 

 


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