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自然の森に学ぶ生きやすさのヒント

2023年7月30日

 

今回は、「自然の森に学ぶ生きやすさのヒント」というタイトルで書いていきたいと思います。

このテーマで書いてみたいと思った理由があります。それは、この春から「自然の森に学ぶ」ということをベースに自然農や自然栽培について学んでいるのですが、そこで教わることが、心のしくみや私たちの苦しみのしくみと全く共通する!と実感することの連続だからです。自然の森の在りようには、私たちが苦しみから解放され生きやすくなるためのヒントがいっぱい。

そんなヒントを、今回はお話ししてみたいと思います。

自然の森のしくみ

まずは、「自然の森」とは何なのでしょう? そこではどんなことが起きていているのでしょうか? それについて見ていきましょう。

「自然の森」とは

「自然の森」とは、⼈の⼿がほとんど加えられていない種々雑多の木々が生えている森林のことを言います。この自然の森には、多くの種類の生き物(植物、動物、微生物)が生きています。植物も、様々な種類があって、それぞれの背の高さや大きさなどもさまざま。太陽の光を、たくさん必要とするものも、少なくても大丈夫なものある。動物も、虫などの小動物もいれば、草食動物や肉食動物もいる。酵母、カビ、キノコに代表されるような菌類、バクテリア、アメーバーなどの微生物もいます。

 

「自然の森」にはこうした多様な生き物が生息しており、密接につながっています。

 

「自然の森」が持つ循環

図1を見てください

図1 出展:「森の食物連鎖」Acorn編集部

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の中では、植物、動物、微生物の3つの間で、一つのサイクルが回っています。

植物を昆虫や草食動物が食べ、それらを肉食動物が食べ、その動物たちのフンや死骸、落ち葉などを微生物が分解し、その微生物が栄養素を生み出し、その栄養素を植物が吸収していく・・・という循環が起きているのです。

 

この循環の中では、植物が炭水化物(果実や葉や茎など)を生みだせば生み出すほど、それを餌とする動物たちは繁殖することができ、それによって土壌には植物の葉っぱ、倒木、動物の死骸、フンなどが与えられることになり、それらが与えられれば与えられるほど微生物が働いて、土壌に栄養素がもたらされ、植物は育ち、植物が豊かになればなるほど、さらに炭水化物の生成も行われます。

このような循環システムの中では、植物、動物、微生物がそれぞれ多様であればあるほど、循環は豊かになり、さらに安定するのです。

 

「自然の森」の循環を支える多様性

次に、図2を見てください。

図2 出展:「生態系ピラミッド」Acorn編集部

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、「生態系ピラミッド」といわれるものです。三角形の形状で示され、食われるものが食うものより多いことを表してもいます。一見、この生態系ピラミッドの最上位にいるものが一番強いものと考えがちですが、そうではありません。なぜなら、このピラミッドの中の生き物たちはこれまで見てきたように互いに密接なつながりがありますから、もし下位のものがいなくなってしまえば、たちまち上位のものも存在できなくなります。

 

この生態系ピラミッドを安定させるのに植物、動物、微生物それぞれの領域の中で多様であればあるほどよいとも言われます。これは、多様な種がいることで、もしある種類の虫や動物が病気で数が減ったとしても、別の種類の虫や動物、植物が存在することで、バランスを保ち、循環が途絶えてしまうことを防ぐことができるからです。もし単一の種しかいなかったとしたら、その種がいなくなったり、あるいは何らかの病気にかかったとしたら、それらを捕食していた上位の種にも影響が出て、最悪の場合、全て絶滅するということもあり得るでしょう。

 

さらに、多様な種がいる「自然の森」では、草が生い茂りすぎて他の植物を侵食したり、虫によって森が食べつくされてしまったり、病原菌が広がってしまったりといったようなことが起きません。(害)虫や(病原)菌が出たとしても、それらは森にとっては問題とはならず、循環を安定的に維持できるのです。それは、多様な種がいることでバランスがとれるからです。

 

このように、「自然の森」が持続可能であるのは、そこに“多様性”があるからだということがわかるかと思います。

またこのことからも、「自然の森」の中には何一つ、無駄なものはない、ということも言えるのだと思います。

 

自然の森と心のしくみ

この自然の森のありようを学んだとき、私は、私たちや心も全く同じであるなと思いました。

 

多様であるからこそ持続可能である

私が「自然の森」の話を聞いたときにまず思ったのは、多様であるからこそバランスや調整が働き、それが回復につながるのだなということです。そこから「やはり私たちの中には全てがあってよいし、不要なものがないのだな」とも思えました。

 

私たち自身は、そもそもいろいろな要素を持った存在です。いわゆるポジティブな面、ネガティブな面、受け容れることができている部分、傷ついている部分、隠しておきたいと思っている部分など様々な部分を持っているのが私たちの自然な姿なのです。

 

ところが、私たちは、不快なものや感じたくないものなどを自分の中で否定したり抑圧したりしようとします。すると、森の中で何かの植物を無くしてしまうと森の循環が崩れるように、心の中もバランスを失い、物事や相手の見え方が歪んだものになってしまうのです。

 

歪んで見えるというのは、例えば、「自分は能力がない」と自分を否定し、自分の能力を抑圧すると、周りが能力にあふれた人がいるように見えたり(それによって羨望や妬みが生じたり)、反対に自分と同じように能力がない人がいるように見えたり(それによって、嫌悪感やイライラ、怒りが生じたり)、といったことを指します(これを「投影」と言います)。

 

このように、もともと多様であるにもかかわらず、何かが抑圧されてしまうと、私たちの中でどこかに滞りとなってしまい、自然なありようから外れることになって、それが私たちの苦しみになるのだということです。ひどい時には、何らかの症状となって体に現れたり、慢性的な症状となってしまうこともあります。

 

見えないものも大事な役割を果たしている

自然の森の循環を安定的に維持することに役立っていることのひとつとして、植物が多様であることで生まれる高低差という要素があると言われています。

 

森には高木、中くらいの背の木、低木、藁、草など様々な高さの植物があるように、高さの違う(植生の多層構造)ものが共存しています。そして、背の高い木は、高い太陽のエネルギーを使い、中くらいの背の木は、中くらいの太陽光を必要とし、低い木は、少ない光でも育ちます(森の中にある植物は緑が濃いので、あまり太陽光がなくても育つようになっているそうです。)。

 

また、森は雨もうまく利用していると言われます。高低差があることで、上から順々に雨の勢いを和らげることができ、直接土に雨が降り注ぐことを防いで、土を流出させずに、地下水を作っていくことができるのだそうです。

 

このような、植物の多様性によって生まれる多層構造によって、光と水を最大限に活かすことができているという話を聞いて、これは私たちの意識の話に通じる話でもあるなと思いました。

 

多層な構造を持つ森も、空から見た時には、森の中に、中くらいの木、低い木、落ち葉があることが見えにくいのと同じで、私たちの心も階層の深い部分にあるものは見えないのです。そして、顕在意識にでてくる思いや感情ばかりに目がいき、振り回されてしまいます。

 

例えば、相手に受け入れられているかどうかが気になっている人がいたとして、その人がどうしてそうなのかの根本には、「私は空気が読むのが下手だ(だから愛されない、受け容れてもらえない)」というビリーフがあったとします。その場合、潜在意識にあるこのビリーフを捉えることができないと、顕在意識に出てくる「相手の反応が気になってしょうがない」ということだけに翻弄されてしまうことになります。そして、もともとその人がもつその人らしさを発露できないままになってしまいます。ですが、本来は、「どうして空気が読むのが下手だ」と信じてしまったのかの理由を理解することが、生きやすさにシフトさせるのです。

 

ですから、私たちも、苦しいと感じた時には、私たちの心も多層構造であって、その苦しみは普段見えていない自分の潜在意識の中にあるいろいろな気持ちやニーズから生じているということを思い出したいですね。

そうすれば、森が最大限に光と水を活かして自然なありようを持続しているように、私たちも、自分という存在を最大限に生かし、本当の意味で「生きる」ことができていきますね。ちなみに、潜在意識の中にある思いや感情に気づいていくのは難しいので、この部分をセッションではサポートしています。

 

まとめ

ここまで、自然の森の循環と多様性になぞらえながら、人の心や苦しみのしくみを見てきました。

 

私たちが苦しくなっていたり、生きづらさを感じたりしている時は、循環を妨げることが起きているサインであり、ひいては、自分の中の多様性を抑えてしまっているときと言えます。

 

ですからそんな時は、これまでお話をしてきた、

心には階層があることを思い出し、
 
何一つ不要なものはなく、何かを否定したり、排除したりしない姿勢で、
 
より心の深いところにあるものに気づいたり、受け容れていくこと 

をしていきたいですね。

 

そうすれば、そもそも私たちの中にある、有機的で調和がとれている自然の森が、さらにさらに生命力あふれたものになるでしょう。

 

 

 

 


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トラウマについて~生きづらさから解放されて自分を愛する力を取り戻すために~(後編)

2022年12月29日

前回は、トラウマがどのようにできるのか、そしてそのトラウマがどうして残り続けるのかについてそのメカニズムを見てきました。

今回は、「トラウマ記憶」としてとどまることでどのような影響があるのかについて理解するとともに、前回のメカニズムを踏まえて、どのようにトラウマから回復をしていけばよいのかについてみていきましょう。

 

トラウマ記憶が留まることの影響

トラウマは、自分自身のとらえ方や世界の見え方に影響を与えます。前回みてきたような様々な要素や因子によって、私たちは強い恐怖感、どうにもならないことによる無力感や孤立感、分離感を感じると、それらから自分を守るために3つのFのFreeze 反応を起こし、それらを体の中に留めます。

 

私たちは、元々、感情―感覚―思いを通して、自分や世界をとらえるというしくみを持っているので、留めてしまった感情―感覚―思いが解放されない限り、私たちは自分のことを無力な小さな存在と感じたり、誰からも助けてもらえない存在だと思ったり、世界や社会は怖いところだと感じたりという風に、自分自身や世界へのとらえ方を変えてゆがめてしまうのです。→過去記事リンク

 

では、自分や世界をゆがめてとらえることで起きることとは、どのようなことでしょうか?

 

元々の私たちの自然な状態から遠ざかる(PTSDの症状)

体験がトラウマとなると、自分は小さな存在、犠牲者であると自分のことをとらえることで、下記のような反応のしかたを起こします。これらをPTSDの症状と言います。

 

・脅威感から抜け出せない:心も身体も警戒を解けないので、常に不安で、緊張している状態になる。そのことによって不眠、イライラするなど感情の調整がしにくくなる、身体への影響(例えば疲れがとれない、頭痛、過敏性大腸炎など)としても現れます。

 

・体験が過去のこととして整理されずに再体験症状として現れる:体験した当時と似たような状況に遭遇したり、ふとした何らかのトリガーによって、体験時にうけた感覚がそのままよみがえって、体験を再体験(フラッシュバック)する状態になる。

 

・トラウマを思い出したり、考えたりしたくないために回避行動をする:トラウマの記憶と関連するものを考えないようにしたり、思い出すきっかけとなるものを回避しつづける状態になる。時には、再び傷つかないように、心を麻痺させる方法として、アルコールや薬物などに依存をしていくこともあります。いずれも回避行動を取ることで、自分の普段の行動は制限され、生活の質が落ちていくことにもつながっていきます。

 

このように、自分や世界をネガティブにとらえてしまうと、私たちが本来もつ活力や元来の自然な状態から遠ざかる方向へと向かうので、生きづらさへとつながってしまいます。

 

安定した人間関係を築くのが難しくなる

トラウマ体験によって自分は守られない、世界は安全ではないといった、自分や世界への信頼が損なわれた状態になると、人間関係を築いていくことは当然難しくなってしまいます。

 

トラウマ体験によって自分や世界についての認知がゆがめられると、自分はいつも小さく無力な存在として存在することになり、その反対に人々や世界は信頼できない、やさしくない大きな存在として存在することになるでしょう。

そうなると、相手のことを怖いと思って避けたくなったり、逆に、本当は危険な相手かもしれないのに「こんな自分でも受け入れてくれる人なのではないか」と思って、過剰に相手に期待や好意を抱いてしまい、それが与えられない場合そのことで傷ついてしまったり、ということが起きます。

 

また、簡単に「支配―被支配」の構図に取り込まれてもしまいます。自分は無力だと思っているので、力の欠乏感を埋めるために、自分よりも力を持っている何か(人やモノ)を必要としてしまい、その相手の言いなりになったり、逆に虚勢を張ってあたかも自分に力があると感じたいために「誰か(何か)を支配する」ことに固執するといったことが起きます。境界線の記事でも書きましたが、共依存がトラウマと関連があるのは、トラウマによるゆがんだ自分や世界への見え方が、自分と相手との間のパワーバランスを見誤らせてしまうからなのです。

 

 

このように自分や世界への信頼や信用が欠落した状態は、自分と相手との適切な距離感をわからなくさせ、安定的な人間関係を築くことの障害となってしまうことにつながります。

 

抑圧することにエネルギーを使ってしまう

トラウマによって、凍らせた感情―感覚―思いは、解消されない限り、過剰な神経の高ぶりをもたらしたり、ふとしたはずみに再体験の症状がでたり、心にも身体にも影響を及ぼし続けます。このような状態が続くと、私たちは、野生動物のように解放するという方向ではなく、それがあまりにつらいので、さらに抑圧をしつづける、ということをします。

この、何かを思い出さないようにしよう、抑えようとする動きには、相応のエネルギーが必要です。ここにエネルギーが費やされると、抑うつ状態になったり、自分が何を感じているのか、何を思っているのかがわからなくなくなってしまう「感情的なマヒ状態」に陥ります。感情的なマヒ状態になると、自分の感情の扱い方、向き合い方がわからなくなってしまいます。トラウマの解消のためには、凍らせた感情―感覚―思いにアプローチして解消をしていく必要がありますが、この感情的なマヒ状態があると、感じたり、向き合ったりすることが難しくなり、それがトラウマからの回復を阻み、トラウマに苦しみ続けてしまうことにもつながってしまうのです。

 

ここまで、凍らせた感情―感覚―思いによって変えられたネガティブな自分や世界への認知がどのような形で影響がでるのかについて見てきました。

前回の記事で書いたように、野生動物は、トラウマを残しません。それは、捕獲者によって脅かされた生命の危機が去ると、自ら凍らせた状態(仮死状態)からゆっくり起き上がり(醒めて)、深呼吸し(腹側迷走神経系を刺激している)、体をぶるぶるふるわせて、留めていたエネルギーをリリースするからでした。

 

私たちがトラウマから回復していくには、上記の野生動物のように、フリーズさせて留めてしまったエネルギー(感情―感覚―思いの集積委)を解放することが大切です。

 

それでは、この凍らせた感情―感覚―思いをどのように解放し、トラウマから回復していけばよいのかを見ていきたいと思います。

 

トラウマからの回復のプロセス

凍らせた感情―感覚―思いを解放するには、まず、安心安全を感じられる状態になることが重要です。なぜなら、それが感じられないと、すでに書いたようにそもそも感情にアクセスすることができないからです。感情にアクセスできなければ、負の感情や感覚を解放することもできません。

 

感情にアクセスするためには、体験をトラウマにしてしまう4つの要素(UDIN)のうちの、I(一人で対処するしかなかった:Isolated)の部分にアプローチします。トラウマから回復するには、体験をトラウマにしてしまう4つの要素を取り除けばいいわけですが、特にトラウマは「誰も助けてくれない」という無力感と孤立感が支配する究極の状態なので、この状態と最も関係があるIからアプローチしていくことが効果的です。

そうすることで、これまで感じられなくなってしまっていた「安心安全」の感覚を取り戻すことをできるようにするのです。そこから入ることで、4つの要素の他の要素にアプローチしやすくなります。

 

I の要素にアプローチする方法は、「自分はひとりぼっちじゃない」というポジティブな感覚を感じてもらうことです。具体的には、トラウマの解放ワークに入る前に、サポーターになってほしい人や存在をイメージする、というワークを行います。

 

また、いきなり一番ショックが大きい場面や記憶の感情は扱わず、まずは全般的な負の感情を解放することも行います。具体的には、「もし思い出すとしたなら」という風に尋ねて、向き合うことへの怖さや不安感などを軽くするのです。(この際に、次に述べる感情解放のテクニック(EFT)などの心理療法を用います)これによって、トラウマの記憶に向き合うことへの抵抗も緩まり、感情や感覚へアクセスすることもしやすくなります。

 

私が採用している心理療法としては、「感情解放のテクニックEFT(Emotional Freedom Technique)」や「マトリックス・リインプリンティング」があります。これらは、エネルギーポイントである体のつぼ(経絡)を刺激していくのですが、つぼの刺激によって気が整うとともに、トラウマ体験によって留めてしまった感情や感覚、思いにアクセスがしやすく、アクセスができればできるほど抑圧していた(凍りつかせていた)感情や感覚、思いを解いていくことができるので、結果として歪んで解釈してしまった自分や世界へのとらえ方も変わることとなり、本来の自分、自分らしい自分へと回帰していくことができるのです。

 

また、トラウマケアの方法として「トラウマ解放エクササイズ(TRE)」という療法があります。これは、動物のように身体を震わせる運動をして、身体の中に残っている緊張感、エネルギーを解放することができるものです。ストレスの軽減から、紛争や自然災害などによる重度のトラウマケアにも使われています。

 

トラウマからの回復に大切なこと

再体験しないように注意する

トラウマの解放の治療を受ける、セッションなどの施術を受けるなど、トラウマに向き合うためには、前提として、「再体験」をしないように留意することが大切です。

 

なぜなら、凍らせたものが一気に急激に噴出してしまうと、処理したり整理したりする許容範囲を超えてしまい、それが新たなトラウマになってしまうことがあるからです。

 

炭酸水のボトルを急激に開けると、中の炭酸水が急激にあふれ出たという経験があるかと思いますが、トラウマも同じです。トラウマと向き合うためには、凍らせたものが一気に溶け出してこないように、ボトルのふたを緩やかに開ける際のあの手のひらや指の力を「うまく調整する」必要があるのです。

 

トラウマについての十分な知識、経験がある治療家、施術者を選ぶ

前述のような理由からも、トラウマからの回復のために治療や施術を利用する際には、トラウマやトラウマによってどのような症状や状態が引き起こされるのかについて十分な知識やトラウマ解放についての経験がある治療家、施術者を選ぶことも大切でしょう。

 

自分自身でも安心安全の感覚を育てる

前述の「うまく調整する」力を適切に働かせることに関係があるのが自律神経です。特に自律神経の回路の一つである腹側迷走神経がきちんと機能しているかがその調整力の鍵を握っています。

腹側迷走神経は、「ここは安全である」と判断されていればいるほど、交感神経と、安心して休息できることと関係のある背側迷走神経とを、バランスよく行き来することを可能にさせてくれる働きを持っているからです。

 

トラウマ体験というのは、自分の中から安全な感覚や安心感をそがれる経験なわけですから、トラウマワークをする際に、「安心、安全の感覚」を持ちながら向き合うためにも、また再体験をしないためにも、腹側迷走神経の機能を回復していく、より活性化できるようにしていくということが必要になってきます。また特に、腹側迷走神経系が十分に発達していない幼い頃に、長期間にわたり、繰り返し心の傷を負う体験をしてきた場合は、このステップがなおさら大切です。

 

腹側迷走神経を刺激する方法として、横隔膜から上の部分にある部位を活性化していくとよいです。以下は過去の記事にも記載しましたが、再掲しますね。

 

・顔のマッサージ・バーボーブーと口、表情を動かしながら声を出す・ハミングする

・深い呼吸を意識する(特に吐くのを長くする)

・自分にとって快適と思える音楽や音に触れる

・自分にとって、安心感や力をもたらしてくれるものをイメージして、イメージすることで得られる感覚をよく感じたり、自分の土台づくりのための資源(リソース)として活用する

・安心感や安全だなという感覚を与えてくれるものと接する(自然に触れることかもしれませんし、安心できる人やペットとの交流などかもしれません。)

 

ここで、このエクササイズを使われたAさんのケースをご紹介します。

Aさんは海外に住んでいらっしゃるのですが、一時帰国する日の前日にパニック発作に見舞われました(これが人生で初めての発作だったので、まさに4つの要素のUDINが揃った体験だったと言えます。)。それからというもの、神経が異常に高ぶり、何をするにも不安で、周りの音や気配など全てに過敏になるなどPTSDの症状に苦しんでいらっしゃいました。この時にご連絡をいただいたのですが、この時感情にアクセスすることが難しい状態でしたので、まずは、上記のエクササイズをご紹介しました。

そして約1ヶ月後にご連絡をいただいた時には、悩まされていた脅威感が消え、気持ちも穏やかな状態になられていました。聞くと毎日欠かさず上記のエクササイズを実践されていたとのこと。改めて腹側迷走神経の調整が、安全安心の感覚を取り戻すことに効果をもたらしたと感じる経験でした。

 

自分も世界も安全であるという感覚を取り戻そう

2回にわたって、トラウマのでき方、残り続けるトラウマによる影響について、またそこからどのように回復していくのかについて書いてきました。

 

トラウマのエネルギーは、私たちを過去に留め、私たちの生命力を閉じる方向へと向かわせてしまいます。

しかし、たとえ、絶望や生きづらさがあったとしても、「どんな体験も感情―感覚―思いの集積で構成されている」という私たちの心と身体のしくみに立ち返って、苦しみを生み出す感情―感覚―思いに向き合い、解消していくことで、今を生きているという感覚を取り戻したり、自分も世界も安全であるという感覚を回復することができます。この状態で自分自身や世界と関わっていきたいですね。

 

 


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トラウマについて~生きづらさから解放されて自分を愛する力を取り戻すために~(前編)

2022年12月28日

今回からは「トラウマ」について書いていきたいと思います。

トラウマのメカニズムについての理解を通じて、なぜトラウマの解消が心身の不調や生きづらさからの解放につながるのかを理解していきたいと思います。

シリーズ1回目の今回は、トラウマがどのようにできるのか、そしてそのトラウマがどうして残り続けるのかについて見ていきたいと思います。

トラウマとは

トラウマとは、心に傷を残すようなつらい体験によって、その経験が、時間とともに単なる過去のひとつの記憶として消えずに、「トラウマ記憶」として残り続けることを言います。危険が去っても、トラウマ体験時に感じた思いや感情が、身体の中にとどまって、元に戻らない状態のことを指します。

そして、このトラウマによって、心が本来もつ機能や役割を果たせなくなることはよく知られているかと思います。この状態は、心身に様々な影響を及ぼします。不安障害や、パニック障害、うつ、依存症、摂食障害などの症状となって出たり、人間関係を構築していくことに難しさを感じたりと、生きづらさと深く関係するのです。

 

心に傷を残すつらい体験とは

「心に傷を残す辛い体験」とは、どのようなものでしょうか?

それらは色々に分類できますが、一つの例としては、一過性の非日常的な体験と、継続的にくりかえされる体験に分けることができます。以下はその例です。

 

<一過性の非日常的な体験の例>
・事故に遭った・事件に巻き込まれた
・自然災害、火災を経験した
・リストラに遭った
・暴力的な犯罪に遭った
・レイプなど望まない性行為を強いられた
・親しい人、大切な存在が亡くなった
・自分は経験していないが、他者がこれらを経験しているのを目撃した
・手術や何等かの医療処置において怖い思いをした

<継続的に繰り返された体験の例>

・暴言・暴力など、精神的・肉体的な虐待に遭っていた

・親や養育者から適切で十分なケアを与えられずニグレクトの状態にあった

・性的な虐待に遭っていた

・両親の仲が悪く、親同志の喧嘩、暴力を目撃していた

・長期にわたるいじめに遭った

 

危険な状況におかれたときに起こる生理的反応 3つのFパターン

私たちは、危険と感じたとき、命の脅威を感じるような状況に遭遇した際に、私たちの心と体はどのような反応を起こすのでしょうか?

 

安全が脅かされると感じた時は、私たちはとっさに反応します。「本当に危険なものなのかどうか」といった判断をする間もなく、危険だと察知すると、脅威から命を守るためのプログラムとして、防衛反応が作動するのです。この防衛反応には、3つのパターンがあり、その頭文字をとって、「3つのF」と言われます。いずれも危険な状況から命を守るための大切な生理的反応です。

ちなみに、この時、生命の維持を司る脳幹といった脳の古い部分が使われています。

 

<3つのF>

①Fight 闘う:危険な状況に立ち向かって、その状況を打破しようとする反応。その状況、相手に対して好戦的、攻撃的になったりして闘争モードとなる。

使われる自律神経の回路:交感神経

 

②Flight 逃げる:危険な状況から命を守るために取る反応。安全でないと判断される状況から逃げる、回避する。苦手な状況、人を避けるというのもこの反応です。

使われる自律神経の回路:交感神経

 

③Freeze 凍りつく:闘うことも逃げることもできないときに用いられる反応。あまりの恐怖に身がすくんだり、立ち尽くして動けなくなったりしている状態はこの反応によるものです。動物は、捕獲者に対して闘うことも逃げることもできないときは死んだふり(仮死状態)をして、捕獲者のが興味を失わせて、命を守るという戦略をとったりします。私たちが無表情になったり、ショックな出来事についてよく覚えていなかったり、記憶が抜け落ちるというのは、この反応によるものです。

使われる自律神経の回路:副交感神経の2つの回路のうち、背側迷走神経

自律神経についての記事

 

「過去のひとつの記憶」とならずに「トラウマ記憶」としてとどまり続けるメカニズム(理由)

それでは、単なるつらい経験ではなく、「トラウマ体験」になるのはどういう要素が関係をしているのでしょうか?

 

要素として、

・体験そのものの大きさ(よくある体験なのか、生命を脅かす体験なのか)

・体験のしかた(誰も気づいてくれず、誰にも助けてもらえない、繰り返しつらい出来事を体験するなど)

が挙げられます。

 

「トラウマ体験」となる4つの要素UDINからの考察

例えば、ドイツ新医学の分野では、以下の4つの要素が重なると「トラウマ体験」である、と言うのですが、これはまさに上記の体験の大きさ、体験のしかたという要素ともマッチするなと思います。

 

4つの要素

U:予期していなかった(Unexpected)

D:劇的でショックが大きかった(Dramatic)

I:一人で対処するしかなかった(Isolated)

N:対処する術、方法がなかった(No Strategy)

 

これらの4つを、例えば、地震などの自然災害や、事故などを例にとると、これらの4つがわかりやすいかと思います。これらは突然起きます。だからこそ、そのショックは大きい。たとえ周りに人がいたとしても、気が動転していたり、パニック状態になっていると、助けを求めることも難しくなり、目の前の事態にどうすることもできないと感じる、といった風にです。

 

トラウマレベルに影響を及ぼす3つの因子

またさらに「トラウマ体験」の傷の深さに影響を及ぼす因子として以下の3つがあると言われます。

 

①一つは、トラウマ体験にさらされた時間の長さです。それが、一回もしくは短期間だったのか、長期間にわたったあるいは、日常的に繰り返されたのか。

 

②もう一つは、大人になって経験したものなのか、心も脳や神経系も含めて発達の途中である子どもの頃に体験したものなのか。

 

③最後の一つは、自分と相手との間にどれぐらいの関係性の近さがあったのか、です。
例えば、日常生活の中で、親や養育者との関係が不安定だったり、学校でいじめにあっていっていたなどは、自分と近いい関係がある人との間で起きた問題として捉えることができ、それがトラウマのレベルに影響を与えるということです。

 

凍らせたままになる感情―感覚―思い

先に、防衛反応の3Fについて述べましたが、そのうちの一つであるFreeze反応は、危険で恐ろしい経験に対して命を守るという意味では大切な反応なのですが、同時にその時に感じた感情―感覚―思いを切り離して閉じ込めることもします。解離と言ったりします。その経験とよく覚えていない、記憶が抜け落ちているといったことがあるのはこのためです。生命の維持のために、その時のショックを感じないようにしているわけです。

ちなみに自然界の野生動物は、死んだふりをしたことによって、捕獲者が興味を失って退散し、安全を取り戻すと、ゆっくり起き上がって、深い呼吸をし、体を震わせて体内に閉じ込めていたエネルギーや恐怖、緊張を解放して通常の状態にリセットするということをします。そうすることで、トラウマ体験として残らないのです。

 

しかしながら私たち人間は、野生動物のように、体内にためたエネルギーや感情―感覚―思いなどを自然に解放することができません。

その体験で感じたこと(光景、におい、光など五感で感じ取っていたことも含みます)をそのまま閉じ込め、凍らせることになるのです。

さらに、そこに体験の大きさや体験のしかたといった要素も加わった場合、閉じ込めるものがどれだけ大きいものになるか、想像に難くないかと思います。

 

レジリエンスを低める幼少期の体験

前述のトラウマレベルに影響を与える3つの因子(時間の長さ、時期、関係性の近さ)は、私たちの、ストレスや逆境に対応したり、そこから回復する力(レジリエンス)にも影響を及ぼします。そして、その力が未発達であることによって、トラウマ体験がトラウマ記憶として残ることにもつながっていきます。

対応したり、回復したりできる力は、子ども時代に親や養育者と安定した関係があったり、守られている、ケアされているという感覚が十分に持てていると健全に育まれていきます。

 

そして、それは、その子の世界と自分自身を見る土台にもなっていきます。ですので、この土台が不安定であったり、脆弱であると、成長する中で経験することが、傷(トラウマ記憶)として残りやすくなってしまう要因の一つとなります。

 

 

このように見てくると、様々な要素や因子が影響したり、組み合わさったりすることで、体験がトラウマ記憶としてとどまることを理解できるのではないでしょうか。

 

 

次回は、トラウマによる凍らせたままのものから見える世界と、トラウマからの回復について書いていきたいと思います。

 

 


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幸せになることを選べない、自分に許すことができないとき ~ビリーフを生きる私たち~ #1 ケースA「幸せは長続きしない」

2022年5月16日

今回からは、シリーズで「幸せになることを選べない、自分に許すことができないとき」というテーマでいくつかのケースを見ていきたいと思います。

 

というのも、先日、ある方と話をしていて、その方のお母さんのお話を聞く機会がありました。そのお話は、この方のお母さんは幸せになることを選べないでいたのではないだろうかと感じるお話だったからです。

それを聞いて、私たちは頭では幸せになりたいと願っているけれども、それをどこか選べなかったり、幸せになることを自分に許していないことがあるなぁと思いました。
ということで、これから数回にわたって、そうしたケースについてご紹介しながら、どうしてそのようなことが起きるのか、心の仕組みやビリーフという観点から読み解いていってみたいと思います。

 

婚約破棄をされたお母さんの結婚生活

第1回のケースは、前述のお母さんのケースです。

この方のお母さんには婚約をしていた方がいらしたそうです。お相手の方とは、相思相愛のもとの婚約だったそうで、お母さんは、「婚約が決まった時、亡くなった両親の仏壇に手を合わせながら、『幸せだなあ』と初めて感じた」そうです。ところが、その婚約が、突然破棄されるということが起きます。その理由は、相手の方に別に好きな人ができたからというものでした。そうした話を、その方は大人になってからお母さんから聞いたそうです。

 

その後、お母さんがお見合いで最終的に結婚相手に選んだ方(つまり私がお話をしていた方のお父さん)は、耳に障害がある方でした。

しかも結婚相手となったお父さんは耳の障害だけでなくいくつかの持病も持たれていたために、時に癇癪を起こしたり、感情のコントロールが難しい方だったようなのですが、お母さんはお父さんがどんなに理不尽な行動をとっても、ひたすら我慢して、家族の間に入って仲を取り持つ役目をされていたそうです。

 

また、結婚生活や子育てをしていく中で、このお母さんは、着飾ったり、パーマをかけたり、お化粧をすることや、何か贅沢をすることは、あまりされなかったそうです。

 

このお母さんのビリーフと、ビリーフからとる行動

お母さんが目の前にいらっしゃらないので、本当のところはわからないですが、このような生き方をされたお母さんが持っていたビリーフはどんなものだったのだろうかと思いをめぐらせてみたいと思います。

ビリーフは、私という存在を形成し、そして私たちの解釈や判断、行動に影響を与えるものなので、お母さんが実際にとられた行動や対応、生き方から、お母さんが持っていたであろうビリーフを想像することができるからです。

 

このお母さんは、小さい頃に生みの親を相次いで亡くされ、継母に育てられたそうです。そうしたお母さんが経験した体験や環境からも、このお母さんには「人は去っていくもの」「幸せは長続きしないもの」というビリーフがあると考えられます。それが、婚約が破談になったことで、「やっぱり人(幸せ)は私から去っていく」「やっぱり幸せは長続きしないものだ」とビリーフが強化され、さらに深く刻まれたのではないかと思います。

 

では、こうしたビリーフを持っていると、どんな行動を取るのでしょうか?

 

私たちはビリーフに則った生き方をしますので、上記のような経験やそれによるビリーフがあると、幸せを感じるということに対して臆病になったり、怖れたりするようになっていきます。その結果、頭では幸せになりたいと思っていても、幸せになるために積極的に人生の中でのチャレンジ、挑戦というものがしにくくなったり、そういったものを遠ざけたり、最初からあきらめるということをし始めます。期待が裏切られた時のショックを和らげ、自分を守るために、全体的に、自分や人生に期待しないという態度で自分の本心や本音を出さないように処理をしようとすることも同じしくみです。

 

 

 

また、こうしたビリーフを持っていると、無意識に人が去っていかないように行動することも考えられます。その結果、その人を繋ぎ止めるために、自分より人のことを優先しがちになるかもしれません。

 

 

このお母さんは、「継母に育てられた中で、精神的、経済的な負担をかけないようにと、日ごろから遠慮をしたり、必要以上に我慢をしていた」そうですが、こうした行いになったのも、また、結婚生活で理不尽な夫に我慢し続けたのも、そもそもそういう人と結婚したことも、上記のビリーフが関連していることが推察できます。

 

その方は、お母さんがお父さんを選んだことも「母に確認したわけではいし、母の中で、意識的か無意識的かはわからないけれども、『この人なら自分から去っていかないだろう』という人を選んだのではないだろうか」と話してくれました。

 

 

 

次回は、この「幸せになることを選べない、自分に許すことができないとき ~ビリーフを生きる私たち」のシリーズの続きで、「私は幸せとマッチしない」というケースについてご紹介したいと思います。

 

またシリーズの最後には、どのように信じているビリーフ、思い込みから自由になっていくのか、その回復の道についても触れていきたいと思います。

 

 


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苦しみを解決するには感情をみてみよう! その2 思い込みやビリーフの解体に必要なこと

2022年1月28日

前回の記事では、苦しみから解放されるには、「能力がある自分になる」「繊細でない私になる」という方向ではなく、どうして私は「能力がないとダメだ」「制裁だとダメだ」と信じているのか? どんな経緯、理由があったのか? を自身が理解していくことがカギとなる、ということから、まずは、私たちの中になぜこのような思い込みやビリーフが生まれるのか、その仕組みを見ていきました。

 

私たちの思い込みやビリーフは、体験を通して形成され、その体験の中にあるものは、思いや感情、感覚、ストーリー、イメージなどとともに客観的な判断をされることなくダイレクトに潜在意識へと埋め込まれていくものであることを、発達の観点や脳波との関係からも理解していただけたかと思います。

 

 

今回は、いよいよ、その思い込みやビリーフが自分を苦しめている場合、どうやってその思い込みやビリーフから自由になっていくのか、それをみていきたいと思います。そのために、体験の中にある思い/解釈や感情、感覚、ストーリー、イメージをどのように解体していくのかについて、【感覚―感情―思い/解釈】の関係を紐解きながら解説していきたいと思います。

 

ビリーフを構成する【感覚―感情―思い/解釈】

ビリーフは、経験した事実に対しての、感覚、感情、思い/解釈が合わさってできています。

前回の両親が不仲の家庭の例で考えてみましょう。例えば、自分の目の前で、お父さんがお母さんに対して「〇〇と言っている」。それに対してお母さんが「△△だと言った」、という状況に対して、子供は、ビクビクし(感覚)恐怖感(感情)を感じながら、「お父さんとお母さんが喧嘩している」(思い/解釈)ととらえながら見ます。

 

これらの感覚―感情―思い/解釈の発動は瞬時に、そして同時に起きています。このビクビク(感覚)―恐怖感(感情)―両親が喧嘩をしている(思い/解釈)から、例えば、「世界は安全ではない」といった思い込みや、「自分は守ってもらえない存在」といった自分への解釈/セルフイメージを持つに至っていくのです。

 

ちなみに、物事をとらえる際に、私たちは、体感型、感情型、思考型といった風に優位に働くチャンネルの違いがあり、どれが優位に働くかのタイプの違いによって、思考よりも感覚を先に感じるとか、思考で捉えるのが先など、感じ方の順番の違いが生じます。とはいえ、基本的に事実や状況に対して、感覚―感情―思い/解釈が同時に起こり、捉えている、というのは共通です。

 

 

このように、ビリーフの形成には、経験した事実に対して、その状況に対するセットで起こる【感覚―感情―思い/解釈】が関係している、ということです。

 

【感覚―感情―思い/解釈】の関係

思い/解釈を強める感情、感覚

次にこのセットの中の【感覚―感情―思い/解釈】の関係について、考察をしてみたいと思います。

 

私たちが感動したり、楽しさや充足感を感じたりしている(た)時、あるいは、ショックを受けたり、傷ついたりしている(た)時、これらには必ずそれ相応の感情や感覚の量が伴っていないでしょうか? ポジティブ、ネガティブ関わらず、心が動いた、心に残っている(った)というものは、その時に感じた(ている)感情や感覚が共にあるはずです。

 

私たちが、状況をとらえるときに起きる、【感覚―感情―思い/解釈】のセットですが、このセットの中の感情や感覚が大きいと、思い/解釈は、比例して真実味が強まります。

例えば、何かの演奏を聴いてものすごく胸が熱くなったり、鳥肌が立ったりして感動すると、「この演奏は素晴らしい」という思いになるでしょうし、両親の会話から怖さや恐れを感じると、「両親が喧嘩をしている」という思いを持つでしょう。逆に、高揚感をあまり感じていないときに「この演奏は素晴らしい!」とはならないでしょう。

また、いくら頭で「そんなことはないだろう」と納得しようとしても、どうしてもある考えから抜け出せない、という経験が誰しもあるかと思います。これも、感情や感覚が大きいために、思い/解釈を変えることが難しいことの例です。逆に言うと、この感情や感覚の量が減ったり、解消したりできれば、無理なく、自然に、この思い/解釈が変わるということです。(これを「認知のシフト」と呼びます。)

 

ちなみに、「量」という表現を使っていますが、怖さと悲しさなど様々な「種類」の感情や感覚が伴うことも含みます。様々な感情や感覚があることきも、思い/解釈の真実味は強まります。

 

つまり、私たちが状況をとらえる時には、【感覚―感情―思い/解釈】がセットで動き、その中で感情や感覚の量や種類が多いと思い/解釈の真実味が強まり、ひいては、そこから持つことになる思い込みやビリーフをあたかも真実かのようにさらに信じていく、という流れ、つながりになっている、ということです。

 

思いと感情と感覚は、栄養を与え合う

【感覚―感情―思い/解釈】の関係について、世界的に有名な精神的リーダーであるエクハルト・トールは、その著書『ニュー・アース』の中で、思いと感情と感覚との連動作用の観点からも述べています。

 

「思考と不可分なものとして、もう一つのエゴの次元がある。感情だ。・・・・(中略)・・・身体は頭の中の声が語る物語を信じて反応する。この反応が感情である。そして今度は感情が、感情を生み出した思考にエネルギーを供給する。これが観察も検討もされない思考と感情の悪循環で、感情的な思考と感情的な物語づくりにつながる」(『ニュー・アース』サンマーク出版、p.147)

 

 

例えば、ある人に「これ知ってる?」と言われたとき、「あの人は私をバカにしている!」という頭の中の声を信じている(思考)と、怒りや辱めを受けたような反応(感情や感覚)が起き、これらの反応がさらに自分の頭の中の声を信じ込ませて、「ほら、やっぱり私をバカにしている!」とさらに自分のストーリーにはまっていってしまう、という状態のことです。

 

このように、感覚、感情、思い/解釈は、お互いに連動して、栄養を与え合う、という性質があるのです。これが、ポジティブな場合はよいのですが、ネガティブな連動の場合は、相当苦しくなってしまいます。ですから、思考と感情、感覚の連動作用を緩やかなものにして、悪循環にならないようにしていくことが、苦しみから抜けるカギの一つである、ということもわかるかと思います。

 

 

このように、感情や感覚の量や種類が多いと思い/解釈の真実味を強めること、感覚―感情―思い/解釈はお互いに連動して栄養を与え合う、ということからも、苦しいビリーフ(解釈)を形成する【感覚―感情―思い/解釈】のセットの解体には、感情、感覚にアプローチしていくことが大切だ、ということが見えてくるかと思います。

 

感覚や感情を解放するには体に働きかける

それでは実際に、感覚、感情にはどのようにアプローチをしていけばよいのでしょうか?

 

私の行っているセラピーでは、【感覚―感情―思い/解釈】が発動している「体」そのものに働きかけることを行います。なぜなら、何かの体験をするとき、私たちは体(頭も含む)を通してそれを体験しているからです。例えば、両親の言い合いの状況についての、ビクビク(感覚)―恐怖感(感情)―両親が喧嘩している(思い/解釈)のセットは、体がなければ何を感じ、思っているかがわからないはずです。

 

体が感覚を感じる媒体であることは、わかると思いますが、体と感情とも、密接な関係にあります。

このことは、私たちの感情と姿勢の関係を考えてみるとわかりやすいと思います。

例えば、嬉しい時は、自然と笑みが出て飛び回りたくなったり、小躍りしたくなったりし、 一方で、悲しい時は、肩が落ちたり、うつむきかげんになったりするといった具合です。逆に、下を向いて背を丸めて嬉しさを味わえといっても、なかなか難しいですし、小躍りしながら悲しさを感じろといっても、これも難しいと思います。

また、例えば、災害のトラウマなどがある場合、頭ではもう終わったことだ、時間がたったのだから、と思っていても、本当の意味で解決していないのは、「それはもう終わったこと」「自分はもう大丈夫」といった新しい思い/解釈を持つための体の感覚や感情が伴っていないからだと考えられます。

 

 

このように、苦しみを生み出している思い込みやビリーフがあればあるほど、感覚や感情を解放するために、体に働きかける必要がある、ということが、このことからもわかるかと思います。

 

そのために、私の場合は、体の所定の経絡(つぼ)をトントンと刺激しながら、感覚や感情を解放し、【感覚―感情―思い/解釈】のセットの解体ができるEFT(Emotional Freedom Technique:感情解放のテクニック)というセラピーを使用したり、EFTの発展型のマトリックスリインプリンティングという療法も使用しています。

 

現在、多くの心理療法が開発され、利用することができる環境になってきていると思います。

 

その中で、私たちが苦しくなるときに、

 

・苦しみをもたらす思い込みやビリーフは体の奥深くにある
 
・思い込みやビリーフは、【感覚―感情―思い/解釈】のセットによって成り立っている
 
・感情、感覚の量や種類の多さが、思いを強めたり、連動してストーリーへと発展させていく

 

という仕組みがある、ということをベースに、体に働きかけながら、思い込みやビリーフを形成している【感覚―感情―思い/解釈】のセットにアクセスでき、感情や感覚を解放、変容できる療法を選んでいくとよいでしょう。

 

解体のプロセスは自分への愛

今回は、その1,その2と二部に分けて、苦しみとなる思い込みやビリーフをどのように解体していくのかについて解説してきました。

 

解体のプロセスは、気づいていなかった感覚、感情、思い/解釈に気づいていく、理解していくという、自分へと向けられる愛がベースになっているとも思います。

私たちは、苦しい時ほど、「能力のある私になる」や「繊細でない私になる」といった外に求める方向、言い換えるとさらに自分を痛めつける方向に行きがちですが、上記の自分の内側を見るという自分へ愛を向けることをベースにして、自分がなぜ信じてしまっているのか、どんな経験があったからなのか、それらの中身(【感覚―感情―思い/解釈】のセット)は何なのかを、自分がまず自分の理解者になる方向で、自分に向き合っていってあげたいですね。

 

ビリーフから生まれる悩みと実際のセッションではどう扱うのか?
 

ちなみに、思い込みやビリーフ、例えば「私は能力がない」、「私は醜い」、「私は嫌われ者」、「私は繊細」などというのは、潜在意識の深いところにあるので、普段は気づいていません。そして、悩みとして表れる時には、「嫉妬してしまう」、「比較が走ってつらい」、「みんなが私を受け入れてくれない(他者ばかりが受け入れられているように思える)」、「いつも自分でいられなくなる」などといったようなものになります。

 

ですから、悩みから解放されるためには、悩みを生み出すコアな思い込みやビリーフを見つけていく必要があります。そのためには、潜在意識にアクセスするために、前回の記事でも書いた心の階層を下りることを可能にする「気づきの問いかけ」を使ったり、体に働きかける心理療法(セラピー)が必要となるのです。

 

 


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苦しみを解決するには感情をみてみよう! その1 思い込みやビリーフはどう作られるのか

2022年1月12日

前回の記事では、自分の中に自己否定があると苦しむメカニズムについて見てきました。今回は、さらに一歩進めて、そのメカニズムで大きな役割を果たす「思い込み」や「ビリーフ」について、見ていきます。

 

自己否定で苦しむメカニズム

前回の記事では自己否定は、自分がよしとしない思いや感情を自分が持っていること自体を受け止めたくないために起きるということをお話ししました。

 

自分にとって持っていたいか、いたくないか(否定するかしないか)は、これも、以前の記事で書きましたが、私たちの中に根源的に死への怖れがあるため、どれぐらい死への怖れが刺激されるか、によって決まるのでした。例えば、「私は能力がない」、「私は醜い」、「私は嫌われ者」、「私は繊細」などという思い込みやビリーフがあったとして、これらが生き残りの可能性を低めると解釈されると、持っていたくないものになる、否定したいものになる、というわけです。

 

ある人は、「私は繊細だ」という思いがあっても、あまりネガティブにとらえていないのに、ある人にとっては、とても否定的に響いてしまう、という違いがあるのは上記の怖れが刺激される度合いの違いなのです。

 

「私は〇〇だ」という思いが人によってとらえ方、響き方が違うということは、これは、絶対的なものではなく、「能力がない」「繊細だ」といっても何をもって「能力がない」「繊細」というのかも人によって違うでしょうから、私たちは、それぐらい、相対的で、非常にあやふやなものを信じていると言ってもよいかと思います。

 

ですから、苦しみから解放されるには、「能力がある自分になる」「繊細でない私になる」という方向ではなく、こんなに相対的であやふやな思い込みであるにもかかわらず、どうして私はそれを信じているのか? どんな経緯、理由があったのか? を自身が理解していくことがカギとなります。

 

そこで、今回は、まずは、私たちの中になぜこのような思い込みやビリーフが生まれるのか、その仕組みを見ていきたいと思います。

そして、その仕組みがわかれば、どのように思い込みやビリーフを解放していけばよいのかについても理解ができます。一緒に見ていきましょう。

 

体験を通して作られる思い込み、ビリーフ

私たちは、自身が経験したこと、見たこと、聞いたことなどを通して、思い込みやビリーフを形成していきます。
子供から、大人へと成長していく過程の中で、私たちを取り巻く家庭や学校の環境での体験、友人・交友関係での経験、社会にある常識や価値観などが、私たちの思い込みやビリーフの形成に影響を及ぼします。

 

子供時代というのは、家庭や幼稚園、保育所、学校での生活というのが、子供の世界の大半を占めている時期であり、様々な情報や価値観、世界観に触れられる機会が少ない時期です。そのために、起きた事柄への判断が客観的にできにくく、誤った解釈、認識などもストレートに信じこんでしまう時期とも言えます。

 

例えば、両親の間でのケンカが絶えないなど、家庭の雰囲気がピリピリした中で育った場合、安心安全の感覚が養われないままとなり、「社会は安全ではない」といった思い込みや、親が不仲なのは自分のせいだと思いこみ、その結果、「私は愛されない存在、いらない子」といったビリーフ(セルフイメージ)を持ちやすいことになる、ということです。もし、虐待やニグレクトがあった場合など、ビリーフ形成にどれだけの影響があるかは想像に難くないでしょう。

 

それに加えて、特に発達の段階では脳波も大きく関与していると言われています。
私たちの脳波ですが、4つの状態に分けられ、通常の状態は、ベータ波。リラックスしている時は、アルファ波が出ています。瞑想状態や浅い眠りの時はシータ波で、深い眠りの時の脳波はデルタ波です。

 

私たちが生まれてから6,7歳までの脳波は、
生まれてから2歳までは、主にデルタ波と言われ、2歳から6,7歳にかけてはシータ波が増えてくる時期と言われています。
つまり、6,7歳までの期間、デルタ波とシータ波が占める子供の脳は、催眠状態のようにあらゆる情報を吸収し、刷り込みや主観的にとらえた信念や考えを潜在意識にダイレクトに蓄積していくのです。

 

このように、6,7歳までの時期と思い込みやビリーフ形成には、深い関係があることが理解できるかと思います。

 

思い込みやビリーフを形成する体験の中にあるもの

思い込みやビリーフは各自の体験をもとに形成されるということを考えると、「私は愛されない存在だ」という一見同じビリーフを持っている2人の人がいたとしても、そのビリーフとともにある思いや感情や感覚、ストーリー、イメージなどはそれぞれ違うものである、と言えるでしょう。

 

前述の「私は繊細」というビリーフのとらえ方が、ある人はあまりネガティブにとらえていないのに、ある人には否定的に響いてしまうと書きましたが、それは、このように、このビリーフを形成した体験の中にあるものが違うためなのです。そして、体験の中の思いや感情、感覚、ストーリー、イメージが、死への可能性に近ければ近いと解釈されるほど、思い込みやビリーフは、苦しいもの、否定したくなるもの、持っていたくないものになってしまう、ということです。

 

このような仕組みがあることを踏まえると、私たちに苦しみをもたらすと思える思い込みやビリーフから自由になるカギは、思い込みやビリーフを形成した体験の中にある思いや感情、感覚、ストーリー、イメージを解体していくことなんだな、ということも理解できるのではないかと思います。

 

ちなみに、この記事内で挙げている「私は能力がない」、「私は繊細」、「社会は安全ではない」「私は愛されない存在だ」などの思い込み、ビリーフ(セルフイメージ)は、潜在意識の中にあるため、普段は全く気づいていません。
これらの思い込みやビリーフを見つけるために、心の階層を下りていきながら、これらを探ることができる問いかけ(「気づきの問いかけ」と言います)を使用しています。

 

次の記事では、どのように体験の中にある思いや感情、感覚、ストーリー、イメージを解体していくのかについて、思いー感情―感覚の関係を紐解きながら解説していきたいと思います!

 


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自分と向き合うとはどういうことでしょう?

2021年11月3日

温泉で出会ったおばあさんの話

先日、数カ月ぶりに温泉に行きました。

湯船や脱衣場では、興味がなくても人々の会話が耳に入ってくるものです。それはそれで、その場に居合わせた人たちと時間を共にする感覚にもなり、好きだったりします。

 

今回も、脱衣場で隣にいた80歳くらいのおばあさんが、誰にともなく話していました。おばあさんが話していたのは、こんな話でした。

 

「やっと来れたんですよ。ここのリゾート権をもっているのに予約が大変だった(1日前に予約した私は、ごめんなさいと心の中で謝りました^^)。お父さん(旦那さんのこと)が5月で亡くなったので、一緒に来れたらよかったのだけど。でもね、息子たちがいるからね、今日は家族で来れてよかったのよ。お父さん、ここ好きだったから、もう本当に一緒に来れたらよかったのに……。でもね~予約が大変だったのよ」

 

私は身支度が整ったので、

「来れてよかったですね」、「お父さん残念でしたね」と言いながら、「お先に」とその場をあとにしました。

 

 

その人の世界をつくっている96%のもの

私たちの心は顕在意識が4%で、あとの96%の潜在意識が自分の行動や反応を支配していると言われています。その96%が無意識であるからゆえに、様々な反応や解釈、行動が、この96%から生み出されている、ということにも無意識。

 

例えば、96%の部分に焦りがあれば誰かがうまくやっているように見えたり、不満や自身を否定するような思いがあると他人の些細な言動にイラっときてしまったり、反対に余裕があれば軽口をたたかれたとしても簡単に許せたり。そういうこともこの96%の部分が関係をしているのです。4%に何が現れてくるかは、96%に何があるかによって決まるのです。

 

また、特に96%の部分に、知らずに抑えているものがあると、何らかの形で埋め合わせをしたいという衝動やニーズも生まれます。依存症や摂食障害なども、基本このメカニズムが働いているのです。

 

いずれにしても、表に現れていることは、無意識の領域から生まれているのですが、無意識であるが故に、本当の意味で、どうして自分が今こういう行動をしているのか、なぜこのような表現をとっているのかについて、振り返られることはほぼほぼありません。

 

前述のおばあさんも、どうして自分が話しかけたくなっているのか、いろんな話題の中でどうしてこの話をしているのか、自分では分かっていないのでしょう。

 

 

私をキレさせたもの

こうしたことは、おばあさんに限らず、私も含めて、実はすべての人にあてはまることなのです。

私の例をお話しすると、私が大学2年か3年の時だったと思うのですが、友達に初めてキレて声を荒げた、ということがありました。約束していたバイト帰りのごはんが、都合が悪くなったから行けないと言われたときでした。相手は中学時代からの友人で、甘えもあったとは思いますが、自分でも自分の反応に驚くほど相手にひどい言葉を投げてしまったのです。

 

その頃の私はといえば、自分が何がしたいのかがわからず、色々試すがピンとこず、そしてますますわからなくなるという鬱々とした生活を送っていた時期でもありました。「自分には力がない」「自分は空っぽだ」「自分一人では何もできない」という思いや心もとなさ、不安感、焦りを持て余していたのです。相手の言葉が、そんな私に「あなた一人でやって」と言っているように聞こえ、相手への攻撃を生んだのだと今はわかります。

でも、あの時は、腹が立っているのは約束を破った相手のせいで、自分の無力感が刺激されているからだとはみじんも思っていませんでした。

 

 

おばあさんの96%にあったもの

おばあさんの話に戻りますが、おばあさんの96%の潜在意識には、何があったのでしょうか?

想像の域は出ませんが、このコロナ禍というご時世で、緊張しろ、緩めるなと言われ続けた疲れやストレス、そして、夫を亡くした喪失感や寂しさなどもあったことでしょう。そしてそれらがあれば、今回旅ができたというのは当然、嬉しいことであるでしょうし、様々な感情の中、過ごしてきたことへの称賛やねぎらいを求めたくもなるのだと思います。「お父さんがこの宿が好きだったから~」と話したのは、「自分だけ楽しんじゃ申し訳ない」と自分をいさめる気持ちが働いたのかもしれません。でも逆に言うと、それぐらいおばあさんは嬉しい気持ちで一杯でもあったのでしょう。

そんなふうに、自分では意識されていない、いろんな感情の重なりがある、ということです。

 

 

自分の意識されていない部分に光をあてる問いとは

表に出てくる反応や行動は、目に見えるものなので、わかりやすいものです。でも、それらにはいつも目に見えないワケがあり、理由があリます。さらに、そのワケや理由を支えているビリーフや価値観、記憶、セルフイメージなどがあるのです。そしてそれは、意識されていない96%の部分にあり、それらを通して事柄や人、状況を見、その結果4%に反応や行動としてでているのです。そういう意味で、意識されていない96%の部分に光をあてていくことは、本当の意味での“自分をわかっていく“ことでもあります。

 

今、こんなふうに反応したり、行動したり、解釈したりしているけれども、

 

ということは、

 

◎どういうことが私の中で起きているからだろうか?

 

◎このように反応するのは、私の中でなにか前提としている価値観などがあるからだろうか?

 

◎何か気づいていない感情や思いがあるからなのではないだろうか?

 

まずは、立ち止まって、このような問いを立ててみませんか?

そうすると、これまで意識されていなかった部分に、光があたり始めます。そして、これらの問いに答えるためには、自分に向き合わないとなりません。

 

 

自分に向き合ったことで得たもの

私は、あの声を荒げた数年後、朝起き上がることができなくなったり、パニック発作を経験することになりました。自分と向き合わず、本当の意味で自分をわかっていないことから生じる苦しさや生きづらさは、体、精神に影響を及ぼします。自身の経験から、また日々伴走をしているクライアントさんからも、それがわかります。

 

自分と向き合うかどうかは、最終的に本人が決めることだと思います。

 

私の場合は、あの生きづらさを経験したり、パニック障害になったことで、自分と向き合い始めました。それを経て、今、確実に言えることは、自身に起きたこと(キレたこと、不安で一杯だったこと、色々なことができなくなり深い自己否定の中にいたこと、などなど数限りなくあること)について、誰も悪くなかったのだな、という平和な境地にいられている、ということです。

 

この境地を多くの人たちと分かち合いたい、という思いが働くので、どうしても自分と向き合うこと、無意識の領域に気づいていくことについて語る時、ついつい熱くなってしまいます。

 

 

ちなみに、くだんの友人との友情は今も変わらずに続いています。


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パニック障害セミナー ブログ 心のしくみを理解し安心をとりもどす

【パニック障害セミナー】どうしてつらいの?なぜ不安になるの?心のしくみから解説

2020年12月31日

こんにちは!
2020年大晦日の日の投稿になりました♪

今年も当ブログを読んでくださり、また動画を観たりしてくださりありがとうございました。
また、セッション、セミナーでご一緒させていただきましたみなさまもありがとうございました。

私がパニック障害の症状で苦しかった時は、
不安なのに加えて、何をしたらよいのかがわからなかった、というところで苦しみを深めていたと思います。
(正確に言うといろんな対処方法はやっていましたが、それがなぜか効かない、根本的にすっきりしない、ということが起きていて、対処方法を探しまくる迷い子になっていた)

ここからラクになっていけれたのは、
不安感が生じるしくみ、発作が繰り返すメカニズムを心、身体のしくみから理解することができたからでした。
しくみをわかった上で、初めて何をしたらよいのかがわかったからです。

なので、どうしても、セッション、セミナーでは、”しくみ”を理解していただくことに、
喜びを感じてしまいます^^(笑)
セミナーでも熱く語ってしまう(笑)熱い熱い💦(笑)

 

ということで、2021年も変わらずに、心のしくみ、身体のしくみ、脳のメカニズムをベースに、
パニック障害、不安症を理解していく機会を提供し続けていきたいと思います。
それを通して、必ずどう向き合っていけばよいのかが見えてきますよ!
ご自身の中にある力を取り戻しながら、回復へのジャーニーを進んでいかれることをサポートしていきたいと思います!

 

引き続きよろしくお願いいたします(*^^*)

 

12月26日が今年最後の「パニック障害セミナー」だったのですが、20201年も定期的に開催をしていきます。
1月、2月の開催分の詳細は下記です♪

 

パニック発作、予期不安から解放されるためのパニック障害セミナー

~パニック障害、不安症の症状に悩んでいる方、またそのご家族などに~

心のしくみの観点から発作、不安感、恐怖感が起こるしくみを解説しています。
しくみを踏まえると、心、身体(神経系、脳科学)に起きている反応に対して、どのような方法、アプローチをとればいいのかも見えてきます。
根本的な解消に効果のある最新の心理療法についてもご紹介します。
ご自身に力を携えた状態で向き合っていくことを可能にする「しくみを知る」機会に触れてみませんか?
一緒に、根本的な改善に向けて歩みだしましょう!
私の経験、学びも惜しみなく出させていただきます♪ 🙂

◎1月開催:2021年1月30日(土)10:00~12:30

◎2月開催:2021年2月27日(土)10:00~12:30

フォーム:http://ws.formzu.net/dist/S2276840/

 

今回も最後まで読んでくださりありがとうございます♪
よいお年をお迎えください♡


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【パニック障害】絶望的な気持ちがあったとしても

2020年11月17日

ラジオで紹介されていた本「夜明けのすべて
パニック障害の山添君とPMS(月経前症候群)の美紗のそれぞれの再生のものがたり

パニック障害と公表することもできず、孤立感を深め、
制限された生活の中で、発作が起きないかと怯え、
気力、生きがいも失って、分断された世界観の中に生きている山添君
その彼が、美紗との交流を通じて、新たな視点を持ち始める。

 

以下、印象的な言葉の抜粋

「恋人に友達、一緒に仕事に向かっていた仲間や上司。みんな遠くに行ってしまったと思っていた。・・・(中略)・・・新たに誰かと打ち解けることなどないと思っていた。でも本当にそうだろうか?」

 

 

「俺はパニック障害なのだ。
集団行動に、電車移動に、外食。苦手なことはやる必要がない。
無理をしてしんどくなれば、もっと重い症状を抱えることになる。
そうやって、いろんなことから自分を切り離していた。
だけど、好きなことまで遠ざける必要はない。」

 

 

 

美紗と山添君の間には、友情も恋愛感情も感じていないというある意味カラッとした関係性なのだけど、

その関係性だからこその、面倒くさいもの抜きで、山添君の中から、彼がもともと持っている純粋な「他者を思いやる」という動きが発動し、

そこから彼の、世界や人、そして自分への見え方が変わっていくということが起き始めたのだと思う。

 

病の犠牲者であるというストーリー、
だれもわかってくれないだろうというあきらめのストーリー、
もはやこんな自分には価値がないだろうというストーリー
これらのストーリーにどっぷりつかることは簡単だ

一方で、今、閉じた世界にいると思っていたとしても、

また、山添君のように美紗のような存在や、カラッとした関係性が近くになくても、

このストーリーから抜け出そうとすることはできる

ストーリーから抜け出せたら必ず「自分はどうしたいか」という自分主体の声がでてくる
症状があるけれども、生き生きし始める山添君のように

 

抜けだす方法、きっかけ、それらがどういうものか、それはその人にあった形でよいと思う
(セラピストの立場から言えば、ストーリーを作っているのは、思いであり、感情であり、感覚(体)であるので、それらに働きかけていくことが有効と思うが)

ただ、再生していく方法、道すじはちゃんとあるということは覚えておきたい
症状があったとしても、自身の心の声までつぶす必要はないのだから

 

☆募集中のセミナー☆

パニック発作、予期不安から解放されるためのパニック障害セミナー

~パニック障害、不安症の症状に悩んでいる方、またそのご家族などに~

心のしくみの観点から発作、不安感、恐怖感が起こるしくみを解説しています。
しくみを踏まえると、心、身体(神経系、脳科学)に起きている反応に対して、どのような方法、アプローチをとればいいのかも見えてきます。
根本的な解消に効果のある最新の心理療法についてもご紹介します。

◎11月開催:2020年11月28日(土)10:00~12:30

◎12月開催:2020年12月26日(土)10:00~12:30

フォーム:http://ws.formzu.net/dist/S2276840/

今日も最後まで読んでくださりありがとうごあいます!


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【パニック障害】症状がつらいのは?発作がでるのは?心のしくみから解説

2020年9月13日

こんにちは!

パニック発作を経験することから始まるパニック障害

 

1.発作への意味づけができあがると(例:「発作とは怖いものだ」など)

発作がでそうになることが怖くなる、
でるのではないいかと気になって、回避行動をとってしまう、

いろいろな状況や環境が怖くなって、不安感が常に伴う

ということがおきます。

 

また、

2.「できないこと、行けないところがあること」への意味づけがあると(例:「それは大人として、弱いことを意味する」など)

 

できないこと、行けないところがあることで自分を責めてしまう、

いつになったらよくなるのだろうと焦る、あきらめさえ感じる

 

ということも起き、それで苦しむということになっていきます。

 

 

3.また、「発作」がでるというのは、
それほどまでにストレスがあった(解消されていなかった思いや感情があった)ということですから、

どれほどのストレスがあったのかを見ていくことは、

普段自分がどのように自分のことをみていて、
それを通して、社会や世界をどのように見ているのか、

に気づいていけることでもあるんですね。

例えば、自分のことを「自分は愛されない存在だ」と心の深いところで信じていれば(普段は意識していなくとも)、

社会、世界は冷たいところと映り、

その中で生き残っていくことに邁進するという生き方をしなければいけなくなります。

そこで感じるであろうストレス、感情、感覚、思いは想像にかたくないですね。

またさらに、私たちは、自分の感情をどうケアするのかを教えてもらえないので、
生き残りに邁進しながらも、ストレス(思いや、感情、感覚)はたまっていく一方です。

そんな中で、人生歩んでいる中で、上手くいかないことも時には起きますよね。
そのことがさらに自分のダメージとなり、ストレスの上にストレスが重なっていく(「私は愛されない存在」という思いも強化していく)、ということも起きますね。

そんな中、何かの刺激によって、「パニック発作」という形で、でてしまう、それがパニック障害であるわけです。(もしかしたら、喘息とか、蕁麻疹とか、他の疾患という形ででる場合もあるでしょうけど、パニック障害の場合は、「発作」という形ででるわけです)

 

なので、自分のことをどう見ているのか、またそれはなぜなのか?を癒していくことが、ストレスからの解放にもなりますし、ひいては、発作がでない状態にもしてくれます。

また、自分への見え方、社会、世界への見え方も変わっていきますので、生き方も生きやすい方へと変わっていくのです。発作もでなくなるし、なんだか気づくと楽だわ~という感じのことが起きていきます。

 

私は回復、克服までに14~15年ぐらいかかりました。(最初のパニック発作は1997年でした)

投薬、通院なしで、試行錯誤でいろいろ試していましたが、
先に書いた「意味づけ」や「解釈」で、反応が起きる、というそんなしくみを心は持っているんだよ、ということを教わったのが、2010年のことです。(この心のしくみは、万人共通です)

それは、目からウロコの体験でした!

それまでの試行錯誤は、反応の部分をなんとかしようと頑張っていたんだ、だから難しかったんだ、ということに気づきました。

 

そして、反応が起きないようにするには、

・私なりの意味づけや解釈がどんなものであるのか
・そしてその意味づけを持つに至った理由

を探っていくことなんだな、と視点や見ていく方向を180度変えました。

意味づけがなければ、反応は起きないのですから!

 

100人のうち2~3人が罹患するともいわれ、
この15年の間で「パニック障害」と診断される人数は9倍にも増えているともいわれています。

診断される人数が増えているというデータを見るたびに、
何か見落としていることがないだろうか?といつも思うのです。
私がそうだったように、、、

いろいろな治療法や方法があって、それを採用されている方もいらっしゃると思います。

またいろいろ試したけど、すっきりとした改善につながっていかないと思っていらっしゃる方もいらっしゃると思います。

 

そこでおさえておくとよいのは、心がもつしくみについて知っておくということです。
また、心と身体はつながってもいますから、どのようなつながり、作用があるのかについても知っておくということです。

車が動くしくみ(どこにどんな部品があって、どのような作用をするのか)を知っていれば、
修理するときに、どこをどんな風に触ったり、変えたりすればいいのかがわかりますよね。

そんな風に、
まずは、心の「しくみ」を知っておく。
わかると、
次にどうしたらいいのか、どこの苦しみを軽くしていけばいいのか、

ということも考えていけるんですね。無駄な苦しみをしなくてすみます。

 

自分がいつも選んでいける、という立ち位置を持っていられるのは、
症状や反応の犠牲者にならなくてもすむ分、それは絶対に楽です。

 

ということで、自分に力を携えた状態で向き合っていくことを可能にする「しくみを知る」機会に触れてみませんか?
一緒に、根本的な改善に向けて歩みだしましょう!
私の経験、学びも惜しみなく出させていただきます♪ 🙂

 

パニック発作、予期不安から解放されるためのパニック障害セミナー

~パニック障害、不安症の症状に悩んでいる方、またそのご家族などに~

心のしくみの観点から発作、不安感、恐怖感が起こるしくみを解説しています。
しくみを踏まえると、心、身体(神経系、脳科学)に起きている反応に対して、どのような方法、アプローチをとればいいのかも見えてきます。
根本的な解消に効果のある最新の心理療法についてもご紹介します。

◎9月開催:2020年9月27日(日)10:00~12:30

◎10月開催:2020年10月24日(土)10:00~12:30

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今回も最後まで読んでくださりありがとうございます♪


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